
軍のクーデターから、1年と3か月が経過した。国軍は、軍政体制の完全復活を目論んでクーデターを強行した。が、国軍は、逆に国民の10年間存在した民主国家を、軍から「奪還」する闘いに追い詰められている。
ミャンマーに求められているのは、軍を国家の法治の下に置き、民主化の徹底と、民族の自決権を基礎にした民族の共存を保証する連邦国家の建設である。
軍のクーデターは、約半世紀続いた「暗黒社会」の復活であり、それは、ミャンマー国民だけでなくA.S.E.A.N.-アジアと世界の希望を打ち砕くものであった。
ミャンマー軍は、歴史的に「特異な存在」であった。国家・社会の上に立ち、絶対者としての位置を確保し続けてきた。1987年には、「最貧国」指定を受けるところまで、停滞と暗黒の社会のままに置いてきたのが、軍であった。
ミャンマー国民は、50万軍隊を相手に、軍を追い詰めている。「内政不干渉」を持ってA.S.E.A.N.諸国からの追求を拒否してきた軍は、国民の闘いで追い詰められ、ロシアと、中国と、日本の軍擁護だけで、蛮行を重ねている。
が、遂にA.S.E.A.N.内部から、マレーシアが、「軍を拒否し、国民とともにある」と、態度を表明した。
事態が動いたのだ。
国軍を支持し擁護し、国軍が権力を握ることを容認するロシアと中国と、日本は徹底的に断罪されるべきだ。
カンボジアの軍擁護の策謀は許されない。
日本政府の軍擁護の態度は、完全に破産している。「最後のフロンティア戦略」は、軍擁護ではなく、ミャンマー国民と歩むことの中にあるのだ。国軍との「共同事業」を絶対化した経済進出は、軍によって、破壊されたのだ。ODAをもってする経済協力事業は、軍との「共同事業」を絶対化することで、ミャンマーの国民の存在を完全に無視してきたのだ。それは、戦後日本の経済発展の歴史であった。だから、軍との共同事業を絶対化してきたのだ。
問われているのは、日本の軍擁護を絶対とする方策なのだ。
軍の存在が絶対なのだ。それ以外のことは、完全に考えられないのだ。事態を掌握する力を完全に失っているのだ。ミャンマー情勢に対しては、完全に統治能力が崩壊しているのだ。ただただ、軍擁護だけしかないのである。軍が、「最後のフロンティア戦略」をクーデターによって破産させているという現実を認めることしかできずに、完全に情勢に対応能力を崩壊させているのである。
軍擁護が一切なので、ロシアと中国の軍擁護=軍体制支持に追随するしかないのである。軍は、追い詰められているので、「ロシアと中国に国を売って、軍だけが生き残ること」を、選択している。それだけが唯一の道なのだ。A.S.E.A.N.諸国に、ロシアと中国に国を売った軍を認めるのかどうかが、問われている。
岸田首相は、ロシアのウクライナ侵略に対して、大騒ぎしている。それは、ミャンマー情勢に対して、方針を持てない現実を胡麻化すものとして、異常に騒いでいるのである。
3月のカンボジア特使派遣を、「少数姻族との和平交渉」で、笹川氏を「使って画策」したが、完全に失敗した後をうけて、中国がアセアンに代わって、公然と軍擁護を明確にし、軍を国家代表として正式に承認して、A.S.E.A.N.諸国の同意を取り付けようとしている。
日本政府は軍擁護が基本であるから、完全に中国の後ろにつくことしかできないでいる。が、それは、完全に日本が、A.S.E.A.N.諸国から信頼と信用を失うことにしかならないのである。
岸田は、4月29日から、5月6日まで、インドネシア、ベトナム、タイを訪問したが、一番最大のテーマーであるミャンマー情勢に対しては、何も主張できなかった。
ミャンマーの隣のタイとの間では、真剣な議論が問われていたが、「意見交換」だけしかできなかった。岸田は、3月の「特使派遣が、事態打開への第一歩である。今後もアセアンの取り組みを後押ししていく」というほとんど意味のない発言しかできず、完全に情勢に対応する力を持たないことを自己暴露した。
キリンビールの撤退に続いて、三菱商事、エネオスと撤退に追い込まれている。個別企業が、撤退を迫られている中で、日本政府は、「経済制裁はしない」という態度を維持し、軍擁護、軍との「共同事業維持」に必死になっている。
ミャンマー「国民統一政府」からの要請にも全く対応していない。完全に軍の立場で、ミャンマー国民を見ているのである。とんでもないことである。ロシアと中国の後ろから、軍擁護で、ついて廻ることしかできない日本政府の態度は、アジアの人々から、完全に見放されるのは明白だ。
日本ーミャンマ協会の渡辺が5月、2,3,4,5とミャンマー訪問して、国軍大臣と会談し、経済、財政、農業の分野での協力体制について、協議している。
また、防衛省は、国軍の士官候補生5名の「留学」を受け入れている。軍との関係維持に必死である。
アセアン内部から、軍拒否、国民支持を明確にした動きがついに始まった。
マレーシアが、態度を公然と打ち出した。
日本が問われている。